新興国市場のグリーンボンド発行額は2023年に1000億ドルへ アムンディとIFCが予想
-
- 新型コロナウイルスの影響を受けてなお、2020年の新興国市場グリーンボンド発行額は400億ドルを記録
- 好市場環境に支えられ、2023年には年間発行額が1000億ドルに達する見込み
- 2012年以降、43の新興国市場でグリーンボンドが発行され、その合計額は2260億ドルに
- 新型コロナウイルスの影響を受けてなお、2020年の新興国市場グリーンボンド発行額は400億ドルを記録
- 好市場環境に支えられ、2023年には年間発行額が1000億ドルに達する見込み
- 2012年以降、43の新興国市場でグリーンボンドが発行され、その合計額は2260億ドルに
欧州最大の資産運用会社アムンディと世界銀行グループの一員である国際金融公社(IFC)は、2021年4月19日、新興国市場グリーンボンドレポート(第3版)を発行しました。アムンディとIFCはパートナーを組み、2018年から新興国市場におけるグリーンボンド投資成長の要因に関するレポートを発行しています。本レポートでは、昨年の新興国市場(EM)グリーンボンドの動向を概説するとともに、発行促進に寄与する政策や規制の変更点も紹介しています。
新型コロナ危機:潜在的成長を加速させる好機
各国が未曾有の世界的危機からの脱却を進めつつありますが、新興国市場における経済回復の道のりは国により大きく異なると予想され、大規模な財政刺激策が必要とされます。そうした中、気候リスクおよび環境面での課題を軽減し将来のショックに耐えうる強靱性を強化するために、新興国は経済回復策の中にグリーンな目標を取り込む必要があります。
アムンディで新興国市場グローバルヘッドを務めるイエレン・シズディコフ (Yerlan Syzdykov) は、次のように述べています。
「IFCとのユニークで革新的なパートナーシップを通じて、アムンディはEMグリーンボンド市場の発展に引き続きコミットしていきます。そのために、さまざまな市場参加者と積極的かつ力強く連携し、市場の需要、供給の双方を高める努力を続けます。金融市場は、持続可能なプロジェクトを支援するという重要な役割を担っています。新興国市場におけるグリーンボンドの発行は今後も堅調に推移し、年間発行額は今後3年のうちに1000億ドルに達すると予想されています。」
コロナ渦終息後の景気回復は、再生可能エネルギー、グリーン都市インフラストラクチャー、クライメートスマート農業などのグリーンプロジェクトやサステナビリティ関連プロジェクトの推進に絶好の機会と考えられます。2030年までに10兆ドル以上の投資機会が新興国市場で生み出され、グリーンセクターにおいて2億人を超える雇用が創出されるとIFCは予想しています。
2020年のEMグリーンボンド発行額は400億ドルを記録
2020年の経済は大きな困難に直面しましたが、世界のグリーンボンド市場は底堅く推移しました。年間発行額は2800億ドルに上り、2007年以降の累積発行額は1兆ドルの節目を突破しました。新興国市場におけるグリーンボンド
の発行も堅調に推移し、2020年には101の発行体が174本、総額400億ドルのグリーンボンドを発行しました。また、7カ国でグリーンボンドが初めて発行されました。
地域別のグリーンボンド発行額では、東アジア太平洋地域が新興国市場全体の中で最大となる76%のシェアを占めました。また中国市場の2020年グリーンボンド発行額は、コロナ危機の影響や新型コロナ対策としての政府による国債増発などにより前年の300億ドル超から180億ドルへと減少しましたが、それでもなお新興国市場トップの地位を維持しました。発行額の半分以上が年後半に発行されており、グリーンボンド市場の回復を示しています。
中国を除く新興国市場での2020年のグリーンボンド発行額は前年比21%増の220億ドルとなり、世界平均の17%を上回るペースで発行が増加しました。発行が最も多かった国はチリ、ブラジル、インドネシアでした。また、エジプト、カザフスタン、サウジアラビアなど7カ国でグリーンボンドが初めて発行されました。
2020年も引き続き多様な投資家からの需要が見られました。また、金融機関以外の企業による発行は3億ドルでした。新興国市場におけるグリーンボンド累積発行額に占める金融機関のシェアは50%に上りますが、先進国市場では19%にとどまっています。また、新興国市場における金融機関以外の企業によるグリーンボンド発行額をセクター別に見ると、電力および公益事業セクターが50%を占めていますが建設および不動産セクターからの発行も着実に伸びています。
IFCでグローバル・マクロ&マーケットリサーチのディレクターを務めるジャン・ピエール・ラコンブ (Jean Pierre Lacombe) は次のように述べています。
「投資家からの需要が強く、発行を促進する政策の導入が進んでいることから、EMグリーンボンド市場は今後も成長を続けることが見込まれます。特に今、グリーンボンド市場の拡大が非常に重要な意味を持っています。新型コロナウイルス感染拡大が社会および経済にもたらした未曾有の困難を少しでも軽減するために、持続可能な開発への投資が緊急に求められているからです。その中でも特に、世界の貧困を軽減する取り組みへの影響が大きく、コロナ渦により大きく後退した分を取り戻すのに何年も要すると予想されます。」
EMグリーンボンド市場の見通しは引き続き明るい
今後のEMグリーンボンド市場の発展を左右する要因としては、グリーンボンド発行のモメンタムへのコミットメントや、国連の持続可能な開発目標と歩調を合わせた資本市場の発展などが挙げられます。
グリーンプロジェクトやグリーンセクターへの資本の流入を促進するためには、サステナブルファイナンスに関する政策と適切な規制の枠組みが必要不可欠です。数多くのイニシアチブがグローバルレベルで実施されれば、EMグリーンボンド市場のさらなる発展を促すとともに、機関投資家が必要とするデータの信頼性および比較可能性の問題にも対処できるでしょう。例えば、ベンチマーク・グリーンタクソノミーの開発、気候関連財務情報開示タスクフォース の提言の実践、各国中央銀行による新興国市場の機能強化への取り組みおよび技術的支援などが、投資家の信頼感の醸成につながると考えられます。
1616450
エキスパート
2014年にアムンディ・ジャパン入社来CIO兼運用本部長を務めたのち、2020年7月にチーフ・レスポンシブル・インベストメント・オフィサーに就任。日本において責任投資を推進するとともにスチュワードシップ活動を統括。前職のブラックロック・ジャパンではグローバル・資産戦略運用部長、取締役CIOを歴任。ペンシルバニア大学ウォートン・スクールにてMBA、EDHECリスク・インスティチュート[...]
もっと見るお問合せ先
アムンディ・ジャパン CEO Office 広報
関連情報
2021/03/29
欧州サステナブルファイナンス開示規則(SFDR)対応について - 4,500億ユーロを超えるアムンディの運用資産が第8条と第9条に分類されました
欧州最大の資産運用会社アムンディは、2021年3月25日、投資信託、専用ファンド、マンデートを含む合計656の金融商品が 欧州サステナブルファイナンス開示規則(SFDR)に従って第8条もしくは第9条*1に分類されていることを発表しました。これは、運用資産額4,520億ユーロ*
2021/03/09
気候変動と社会問題をアムンディのエンゲージメントと議決権⾏使⽅針の中核に
アムンディは、2021年2月18日、2020年の議決権行使およびエンゲージメントの活動結果とともに、2021年に実施する活動の概要を発表いたしました。
アムンディについて
アムンディは、欧州を代表する資産運用会社であり、世界トップ10※1にランクインしています。世界で1億を超える、個人投資家、機関投資家および事業法人のお客さまに、伝統的資産や実物資産のアクティブおよびパッシブ運用による幅広い種類の資産運用ソリューションを提供し、金融バリューチェーン全体をカバーするITツールでサービスの強化を図っています。クレディ・アグリコル・グループ傘下で、ユーロネクスト・パリ市場に上場するアムンディは、現在、約380兆円※3の資産を運用しています。
世界6つの運用拠点※2、財務・非財務のリサーチ能力および責任投資への長年の取り組みにより、アムンディは資産運用業界の中心的存在です。
アムンディは、35ヵ国を超える国と地域で約5,700人※3の従業員の専門知識と助言をお客さまに提供しています。
アムンディ 信頼されるパートナー
日々、お客さまと社会のために
公式ウェブサイト:https://www.amundi.co.jp/
1 出所:インベストメント・ペンション・ヨーロッパによる資産運用会社トップ500社(2025年6月版、2024年12月末の運用資産額)に基づく
2 主要な運用拠点:パリ、ロンドン、ダブリン、ミラノ、東京およびサンアントニオ(ビクトリー・キャピタルとの戦略的パートナーシップを通じて)
3 2025年6月末現在。運用資産額は約2兆2,670億ユーロ、1ユーロ=169.66円で換算。