アムンディは2025年下期世界経済見通しを発表
アムンディは2025年下期世界経済見通しを発表
2025/06/17
欧州を代表する資産運用会社、アムンディは、2025 年6月17 日に 2025 年下期の世界経済⾒通しを発表しました。
政策の混乱と変化を乗り切る
- 不確実性:米国の政策決定と財政の方針をめぐる不確実性の高まりが、今後12カ月間の経済と市場の見通しに大きく影響すると考えています。地政学的なリスク、高水準の債務、財政余地の制約が経済の脆弱性を高めています。
- 分断:主要経済国の景気は底堅く推移していますが、米国は減速が見込まれ、欧州は緩やかな成長、インドは高成長が続くと予想されており、各国の景気の道筋は異なります。成長率、インフレ率、財政動向の差異が分断を加速させ、特に金融政策で顕著になるでしょう。
- 適度なリスク志向の配分:世界経済と金融市場の再編により、株式のローテーションは欧州および新興国市場へ継続すると見込まれます。同時に、短期債券が政策金利低下の恩恵を受ける中、投資家が長期債券により厚いリスクプレミアムを求めていることを背景に、イールドカーブは急勾配化(長短金利差が拡大)する可能性があります。
- 下方リスク耐性と分散:アムンディは適度なリスク志向を維持しつつ、インフレおよび為替リスクに対するヘッジを推奨しています。長期的なテーマに注目し、実物資産やオルタナティブ資産への選択的な配分が、短期的なボラティリティや資産クラス間のパフォーマンス相関の乱れを乗り切るうえで効果的であると考えています。
米国の貿易、外交政策に対する姿勢は、現政権固有のものではなく、今後も続く構造的な変化であることを示唆しており、政策立案、投資、今後を見通すにあたり、世界経済と金融市場の再構築には、慎重さが求められます。
予測困難な政策決定は、経済および市場にとって不利な状況を生み出していますが、新たな投資機会も存在します。不確実性が高く軟調な成長見通しにもかかわらず、主要経済国および企業業績はこれまでのところ堅調さを示しています。 クレジット市場の世界的な見通しは引き続き良好であり、企業収益の低迷は予想されていません。
アムンディのグループCIOであるヴァンサン・モルティエは、次のように述べています。
「国債市場は、債務の増加とインフレ懸念の高まりによって動揺しており、ボラティリティは引き続き高い状況が続くと見ています。投資家は長期債券に対してより高いリターンを求める傾向が強まり、利回りは魅力的に推移するでしょう。重要なのは、米国から欧州や新興国債券へと分散投資を行うことです。」
アムンディ・インベストメント・インスティテュートのヘッド、モニカ・ディフェンドは次のように語っています。
「予測不可能な政策決定、底堅い企業業績、新たな構造的変化はありますが、中央銀行による利下げ方向は、世界の株式市場に投資機会をもたらすでしょう。アムンディでは、欧州の防衛費拡大、米国の規制緩和、日本のコーポレート・ガバナンス改革、『メイク・イン・インディア』イニシアチブなどのテーマに注目しています。」
メインシナリオ:インフレ圧力を伴う成長鈍化 [1]
2025年年始から世界経済の成長見通しは悪化しており、米国の貿易関税に関する不確実性は継続する見込みです。関税はインフレを促進し、実質金利の上昇以上に経済成長に悪影響を及ぼすと考えています。 アムンディの基本シナリオでは、政策の不確実性が時間とともに落ち着き、サプライチェーンの再配置がより秩序立った形で進み、米国の平均関税率は現政権就任前より15%高い水準で推移すると想定しています。世界経済の成長は大きな後退を経験せず、減速する見込みです。
- アムンディは現在、2025年と2026年の世界経済成長率をそれぞれ2.9%と2.8%と予想しており、今後2年間のGDP成長率は先進国市場で1.3%、新興国市場で3.9%とみています。 今後数カ月で、新興国市場と先進国市場の成長率の差は、過去の平均をやや上回る水準で安定すると予想しています。現在、特に欧州でディスインフレの傾向が続いていますが、米国ではインフレリスクが高まっています。
- 米国経済は、不確実性の高まりと関税が需要を抑制し、経済成長率は2023-2024年の3%近くから2025-2026年には1.6%に減速し、潜在成長率を下回ると見込まれます。これは経済的損失と一時的なインフレの再燃を引き起こす可能性があり、これにより企業の利益率が圧迫される恐れがあります。財政措置と規制緩和は限定的な緩和効果しか期待できません。米国の予算案には2つの大きな懸念があります。第一に、米国の債務は今後10年間で3兆から5兆ドル増加すると予想されています。第二に、歳出削減は主に低所得層に影響を及ぼす一方、税制改革は高所得層に恩恵をもたらすため、総消費はさらに減少するとみています。2025年には米国の財政赤字は6.5%近くに達すると予想しています。 景気減速が差し迫っていることを考慮し、FRBは2025年後半に3回の利下げ、2025年末までに政策金利は3.50%に達すると見込んでいます。
- 欧州では、貿易ショックの影響にもかかわらず、経済成長およびインフレは好ましい方向に推移しており、楽観的な見方が広がっています。新たな貿易同盟に向けた積極的な動き、貿易摩擦の緩和、利下げ、ユーロ高は内需と民間の資金需要の緩やかな回復を後押しするでしょう。ECBは2025年末までに利下げをさらに2回実施、政策金利を1.50%として成長の下支えを図ると予想しています。また、ユーロ圏と英国における2025年と2026年のGDP成長率はそれぞれ0.8%近辺と予測しています。さらに、欧州資産はより高い安定性、今後の改革や投資拡大に対する期待、ユーロ高といった構造的な追い風により、今後も投資妙味があると考えています。
- 新興国市場は、全体的にプラスの経済成長とインフレの動向、緩和的な金融政策、中間層の拡大から恩恵を受けています。米国の経済的優位性の後退とドル安も、新興国市場には相対的に有利に寄与しています。セクター別関税はリスク要因ですが、地域密着型サプライチェーンの拡大は新興国にとってポジティブです。インドとASEANは、こうした構造的変化のメリットを享受し、引き続き成長の主要な牽引役となっています。 2025年と2026年のGDP成長率は、インドが6.6%と6.4%、中国が4.3%と3.9%と予測しています。
- アムンディのメインシナリオに対する主なリスク – 下振れシナリオは、貿易戦争の激化や米国の成長鈍化、財政赤字拡大など、地政学的イベントや政策決定によるスタグフレーション環境が引き金となる可能性があります。逆に、生産性の向上によるディスインフレの傾向が高まる政策や動きが出てくるとメインシナリオから上振れる可能性もあります。
投資への影響:グローバルな再編における投資機会
アムンディは、景気サイクル後期が最も可能性が高いシナリオであり、適度なリスク志向を維持しています。 しかし、資産配分を考える上では、地政学リスクとインフレリスクの高まりにより大きく分断された世界、という別のシナリオの可能性も踏まえて検討することが重要であり、米ドル、株式、債券の相関関係が変化する可能性も考慮に入れる必要があります。
アムンディの投資見解では、財政リスクの高まり、債券発行の増加、金利変動により、ベンチマークのイールドカーブのさらなる急勾配化を予想しています。さらに、企業の利益成長率は6%に減速すると見込んでいますが、減益までにはいかないと考えています。
アムンディのダイナミックな資産配分は、市場混乱から生じる機会を捉え、様々な下方リスクに耐えられるように設計されています。 これには、分散化された株式戦略、債券のデュレーションとカーブポジションの機動的な管理、地域にかかわらずより底堅い内需ストーリに着目した地域分散、およびヘッジの強化が含まれます。為替市場では、日本円とユーロが最も魅力的な通貨と見ています。スイスフランは既に高値圏にあり、一方でスカンジナビア通貨とオーストラリアドルは相対的により魅力的な水準にあります。
- 債券 – アムンディは、より急勾配のイールドカーブと金利変動の拡大を予想しているため、米国からグローバル市場へ分散投資する柔軟なアプローチを選好しています。成長とインフレの良好なバランス、及び米ドル安の恩恵を受ける可能性がある欧州および新興国の国債を選好しており、デュレーションについては機動的な対応を採ります。クレジット市場では、質の高いクレジットを重視し、米国よりも欧州の投資適格債を選好しています。ハイイールド債については中立で、年末にかけてスプレッドが上昇する可能性があるとみています。 セクター別では、金融セクターと劣後債を選好します。 銀行の劣後債は、最も興味深いセグメントの一つになり得ます。
- 株式 - 米国市場からの資金流出が続く見込みで、先進国株式の下期リターンは1桁台前半程度にとどまると予想しています。グローバル株式では、バリュエーションや利益率に加え、欧州の防衛・インフラ関連、AI、米国の規制緩和、日本のコーポレート・ガバナンス改革、および「メイク・イン・インディア」といったテーマに関連するセクターを選好しています。欧州中型株、米国の均等加重株、日本の高配当株をポジティブにみています。セクター別では、内需・サービス中心のビジネスを中心にシクリカルとディフェンシブの組み合わせを選好します。エネルギーや素材セクターよりも金融セクターと通信サービス・セクターを選好、ヘッジとして公益セクターを挙げています。
- 新興国市場 – 新興国市場資産は下期にポジティブなモメンタムを示しています。 新興国債券は、ハード通貨と現地通貨の両方で利回りが先進国債を上回り、米国債利回りの変動に対するバッファーとなるため魅力的です。 新興国株式は、世界経済の再編に適応する国々の構造変化から恩恵を受ける立場にあります。業績の底堅さに加え、内需、防衛、ITといったセクターを選好しています。
- 分散投資とヘッジ – インフレリスク(スタグフレーションまたはハイパーインフレ)、米ドル安、相関関係の変化は、長期的なパターンとして浮上しており、ヘッジが必要です。金とコモディティはインフレリスクのヘッジとして有効です。安定したキャッシュフローという点ではインフラおよびプライベート・デット投資が魅力的です。プライベート資産への資金流入は続いており、選別が重要になります。 通貨分散も特に米ドル以外の投資家にとって大変重要です。
Footnotes
お問合せ先
アムンディ・ジャパン CEO Office 広報
アムンディについて
アムンディは、欧州を代表する資産運用会社であり、世界トップ10※1にランクインしています。世界で1億を超える、個人投資家、機関投資家および事業法人のお客さまに、伝統的資産や実物資産のアクティブおよびパッシブ運用による幅広い種類の資産運用ソリューションを提供し、金融バリューチェーン全体をカバーするITツールでサービスの強化を図っています。クレディ・アグリコル・グループ傘下で、ユーロネクスト・パリ市場に上場するアムンディは、現在、約380兆円※3の資産を運用しています。
世界6つの運用拠点※2、財務・非財務のリサーチ能力および責任投資への長年の取り組みにより、アムンディは資産運用業界の中心的存在です。
アムンディは、35ヵ国を超える国と地域で約5,700人※3の従業員の専門知識と助言をお客さまに提供しています。
アムンディ 信頼されるパートナー
日々、お客さまと社会のために
公式ウェブサイト:https://www.amundi.co.jp/
1 出所:インベストメント・ペンション・ヨーロッパによる資産運用会社トップ500社(2025年6月版、2024年12月末の運用資産額)に基づく
2 主要な運用拠点:パリ、ロンドン、ダブリン、ミラノ、東京およびサンアントニオ(ビクトリー・キャピタルとの戦略的パートナーシップを通じて)
3 2025年6月末現在。運用資産額は約2兆2,670億ユーロ、1ユーロ=169.66円で換算。