2023年 グローバル・インベストメント・アウトルック
嵐が過ぎ去った後にかすかな光が現れるか?
- 地政学的な緊張から高インフレまで、引き続き様々なリスクが存在
- 金融政策と財政政策との綱引きで、地域間格差の拡大が激化する可能性
- 世界経済の成長率は2.2%に減速、スタグフレーションが支配的なテーマに
- しかし、バリュエーションは魅力的になってきており、2023年に債券、次いで下半期には株式のエントリーポイントが出現する公算
- エネルギー転換、ネットゼロ、戦略的自主性など、長期的なESGのテーマを模索
2022年11月24日、アムンディは「2023年グローバル・インベストメント・アウトルック」を発表しました。
波乱に満ちた2022年を経て、投資家は地政学的緊張、欧州のエネルギー危機、高止まりするインフレに対して神経質な目を向けています。しかし、FRB(米連邦準備制度理事会)の政策転換が近づく中、バリュエーションが魅力的になるにつれて見通しが明らかになる可能性があります。
アムンディは、世界の成長率が2022年の3.4%から2023年は2.2%に減速し、いくつかの先進国や新興国がスタグフレーションに陥ると予想しています。
欧州では、エネルギーショックに加え、新型コロナウイルス危機の余波によるインフレ圧力が依然として成長の主な足かせとなっています。その結果として発生した家計部門への深刻な圧迫によって、欧州は今年の冬にも景気後退に陥り、その後は緩やかな回復に向かうと考えられます。しかし、それはインフレが弱まることを意味するものではありません。
米国では、FRB の積極的な引き締めが下半期に景気後退のリスクを高めた一方、またもインフレ率の低下には至っておりません。
この低成長・高インフレ環境は、中国を除く新興国にも広がると予想されます。アムンディは中国のGDP(国内総生産)成長率見通しを5.2%から4.5%に引き下げましたが、これでも2022年の低成長水準(3.2%)よりもはるかに良好で、住宅市場の安定と経済の緩やかな再開への期待に基づくものです。
インフレ率は2023年の大半を通じて頑強に高止まりし続けるとみられます。中央銀行は1970年型の危機を回避すべく、「必要なことは何でも」の政策を継続するでしょう。引き締めはさらなる余地があるものの、そのペースは2022年よりも緩やかになると考えられます。欧州中央銀行とイングランド銀行は、直近の声明でハト派的な様相を呈し、今後の引き締めに対しそれほど積極的でないことを示唆しています。日本については、米ドル高が結果的に中央銀行による引き締め開始を余儀なくさせると考えられます。FRBのターミナルレート(政策金利の最終的な到達点)の水準は極めて重要で、6%近辺になると米国が景気後退入りする確率が高まります。
投資におけるインプリケーション
2023年上半期の世界的な成長減速や企業利益の落ち込みを考慮すると、投資家は現時点で金や投資適格債券を選好することで、ディフェンシブな姿勢を維持すべきと思われます。しかし、バリュエーションがより魅力的になるにつれて出現する市場での投資機会を模索するために、年間を通じて調整を行う態勢をとる必要があると思われます。2023年下半期には逆風が弱まり、ビジネスサイクルの改善に伴いポートフォリオのリスク資産を徐々に追加することが好ましいと考えられます。
- 「債券の復活」をテーマに、質の高いクレジットに焦点を当てながら、政策が異なる各国の通貨、並びに流動性リスクや企業のレバレッジにも着目。
- 2022年の利回り急騰や来年に迫った景気後退リスクを受けて、分散投資における債券の特性が回復すれば、株式6割、債券4割のポートフォリオ配分が視野に入る可能性。
- 今後数ヵ月内に株式の価格が再評価された場合、米国を選好し、質・バリュー・高配当志向でエントリーポイントを模索。投資家は、欧州や中国、景気敏感株、ディープ・バリュー株への投資を段階的に増やすことが必要。
- インフレが根強い状況下では、インフラなどインフレに強い実物資産への配分を高めることが有効となる可能性。プライベート・デット(企業の債務に対する投資)は価格の再評価が始まっており、その大部分が強固なファンダメンタルズを有しており、不動産も優れた分散投資の対象。
- 2023年には新興国間の格差がさらに拡大する見込み。中南米や欧州・中東・アフリカのようなインフレや金融面の見通しが穏やかな国は魅力的。FRBの方針転換により、年後半には新興国株式全般の魅力が高まる公算。
- 長期的なESG(環境・社会・ガバナンス)のテーマは、新型コロナウイルス危機とウクライナ侵攻の余波から恩恵を享受する見込み。投資家は、エネルギー転換と食糧安全保障、並びに地政学が引き起こすリショアリング(海外に移した生産拠点を再び自国へ移転すること)のトレンドに注目すべき。労働市場の悪化とインフレが社会的要因への関心を高めており、社会的テーマにも再び着目。
アムンディ・クループCIO(チーフ・インベストメント・オフィサー)ヴァンサン・モルティエ(Vincent Mortier)は次のように述べています:「2023年は二速ギアの年となり、注意すべきリスクも数多く存在します。債券は復活し、市場のバリュエーションはより魅力的になり、FRBが2023年前半に方針転換をすれば、興味深いエントリーポイントが浮上するでしょう」
アムンディ・インスティテュート・ヘッドのモニカ・ディフェンド(Monica Defend)も加えて次のように述べています: 「投資家は来年、世界経済の減速、欧州のエネルギーショック、根強いインフレ、米国と欧州の景気後退リスクといった厳しい試練に直面することになります。2023年に向けてディフェンシブな姿勢で臨むべきですが、年後半に逆風が弱まれば、債券や株式への投資機会を活用する態勢を維持すべきです。インフレと並んで、地政学的状況は今後数四半期のマクロ経済動向を形どる上で引き続き非常に重要と考えられます」
エキスパート
2023年8月1日、アムンディ・ジャパン株式会社 取締役会長に就任。 2015年からアムンディのグループ副CIOを務め、2022年2月にアムンディのグループCIOに就任、ゼネラル・マネジメント・コミッティ他、複数の監督委員会のメンバーを務[...]
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アムンディについて
アムンディは、欧州を代表する資産運用会社であり、世界トップ10※1にランクインしています。世界で1億を超える、個人投資家、機関投資家および事業法人のお客さまに、伝統的資産や実物資産のアクティブおよびパッシブ運用による幅広い種類の資産運用ソリューションを提供し、金融バリューチェーン全体をカバーするITツールでサービスの強化を図っています。クレディ・アグリコル・グループ傘下で、ユーロネクスト・パリ市場に上場するアムンディは、現在、約380兆円※3の資産を運用しています。
世界6つの運用拠点※2、財務・非財務のリサーチ能力および責任投資への長年の取り組みにより、アムンディは資産運用業界の中心的存在です。
アムンディは、35ヵ国を超える国と地域で約5,700人※3の従業員の専門知識と助言をお客さまに提供しています。
アムンディ 信頼されるパートナー
日々、お客さまと社会のために
公式ウェブサイト:https://www.amundi.co.jp/
1 出所:インベストメント・ペンション・ヨーロッパによる資産運用会社トップ500社(2025年6月版、2024年12月末の運用資産額)に基づく
2 主要な運用拠点:パリ、ロンドン、ダブリン、ミラノ、東京およびサンアントニオ(ビクトリー・キャピタルとの戦略的パートナーシップを通じて)
3 2025年6月末現在。運用資産額は約2兆2,670億ユーロ、1ユーロ=169.66円で換算。